見える化バンザイ(パンタグラフ)(型技術、2021)
見える化バンザイ
九州工業大学 楢原弘之
新型コロナの影響下,ステイホームの生活が長引き盛んになった事として,ベランダ菜園があるそうだ.でも植物は,水やりが大変.数日家を空ける事になれば,プランターの草花が枯れてしまわないかと気になってしまう.私は元々,ベランダ菜園に興味は無かった.
それがある日,たまたま水耕栽培という方法がある事を知った.ひょっとして,水やりサボれるかも….調べてみると,ありとあらゆる作物で出来そうだという.そこで発泡スチロールの保冷箱をかき集め,ホームセンターで粉末肥料を購入し,ベランダ水耕栽培を始めた.しばらく水耕栽培を続けていると,ある事に気付いた.根が丈夫に広く張り出し,葉っぱが深い緑色で成長していれば元気な証拠.土に植えた草木では,地中の根の様子は全く分からない.水耕栽培だと,一つ一つの苗も丸裸にされ,健康状態もわかってくる.見える化,おそるべし,である.
当初3株で購入したイチゴの苗は,世代交代し,今や27株に自然増殖した.1週間に一度,バケツ3杯分の水を入れ替え,肥料を溶かすだけ.イチゴは開花し実をつけ,赤くなるまで1か月程必要.でも苗の数が増えてくれば,ある苗で花を咲かせ,別の苗では果実が熟すようになる.そうなるとほぼ毎週,週末は収穫日.夏の暑い数か月を除いて実をつけるようになった.
動物には,消費エネルギーを最小にしたがる,ナマケモノな性格が備わっている.でもご褒美の餌があれば,継続して練習し,難しい芸も覚える.見える化はとても効果的ではあるが,さらに楽しみが後に続くことが,長続きさせる秘訣なのであろう.イチゴ栽培が趣味になった自分は,つくづく動物並だと思い知る.
ところで,見える化といえば,自治体が市民に万歩計を支給し,日々の歩数を定期的にアップロードすると,ポイントが貯まるしくみが始まっている.私が住んでいる市でも,健幸ポイント制度の募集があり,私も応募してみた.とはいうものの,わざわざ,このために急に運動を始めたくもない.動物には,消費エネルギーを最小にしたがる,ナマケモノな性格が備わっている.歩数を増やせないかと姑息な手段に思いを巡らす.かといって,振り回すなどはルール違反.あくまで首に掛けて歩数を増やすのが大人のたしなみ.でも通勤でわざわざ回り道をするのも面倒だ.いつも大股でゆっくり歩いて通勤していた自分は,なおさら歩数が稼げていない.待てよ,ならば,歩幅を小さくすれば通勤で歩数が増えないか?変わるかな?試してみれば,見える化バンザイ.確かに歩数が増えている!原因が判れば対策が取れる.でも最近せかせか歩きになったようにも思う.このようにデータとして見える化されると,週末は,ほとんど歩いていない事が,次には数字として見えてくる.そうなると,週末が来るとそわそわする事が何度か続き,とうとう週末は,朝早く散歩するようになってしまった.
お陰様で,高めだったコレステロール値も正常範囲に収まっていた.まんまと,行政の思惑にハマってしまったようだ.見える化,おそるべし,である.