花粉症(型技術・パンタグラフ 2010年)

 

花粉症

九州工業大学 楢原弘之

 

冬から春先になると、街中ではマスク姿をする人を多く見かけるようになる。大抵は花粉症の人達で、マスクは必須のアイテムになっている。

そういう私自身も数年前から花粉症にかかってしまい、調子がいまひとつ上がらない憂鬱な時期になってしまった。マスクをしたまま人と話をするのも、失礼なようで何だか気が引けるし、外せば目や鼻がむずむずして、かといってマスクを掛ければメガネが曇りどうも具合が悪い。もうたまらないと思っていた頃、どうやら大学の近くに鍼と漢方で花粉症を直す医者がいることを知り治療を受けに行った。

病院の待合室には人があふれ、4時間待ってようやく治療室に入ると、さあ寝て下さいと寝かされて、鼻の横のツボらしき場所へ一瞬で鍼を打たれて、放置されてそのまま10分、さあ終わりです。あっけない治療の後で、受付で処方選を貰い、体質改善の漢方薬を買って帰った。果たして、症状は徐々に治まり、でも花粉も飛ばなくなって来ていたので、直ったのかどうか半信半疑の状態だった。

さて1年が過ぎ、1月頃に例の病院から1枚のハガキが送られてきた。間もなく花粉が舞う時期になり病院が込みますので、早めに予約して治療を受けることをお勧めします。と書いてある。なんと手際の良い病院なのか。もしかしたらあの鍼の効果は1年だったのか!またこんな案内をくれるような病院も私にとっては初めての経験であった。

その時に私は考えた。ここで治療をまた受けては、本当に効果があったのか判らなくなる。無理してその年は病院に行かなかったが、花粉症らしき症状も出なかった。でも花粉もあまり飛んでいなかったのかもしれない。あまり深く探求することも無くそのまま1年過ごしてしまった。

さて今年になり、どうも花粉症らしき症状がまた出てきた。目がかゆくなったり、くしゃみが出たりしてきた。あの病院にお世話になろうかとも思ったが、4時間待たされて10分という、あの理不尽さが過去の記憶から呼び戻されてしまった。鍼で治るならば、ツボを刺激しても同じこと。ということで科学的探究のために、自ら実験台となり己の身を捧げる決心をしたのであった。このつらい花粉が舞う季節の間、自分で自分のツボを刺激することにしたのである。

さてこの試みを始めてから数日が経ったが、頬骨周りのツボのマッサージに専念する毎日となった。鍼で治療を受けた場合のような強烈な効果は期待できないとは思うが、なんとなく症状が治まった気がしている。

つらいのなら早く病院に行った方が良いのではと家人に言われるが、真理の探究には時間がかかるものである。

 

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